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2016-07-25

魚をさばくインド人|調理器具(1)

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インドの台所には、何に使うのか想像もつかない調理器具が結構あります。なかでも、初めて見るとびっくりするのが包丁ではないでしょうか。

これがインドの包丁。
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まな板を使わず、立てた刃に食材を当ててスパスパ切っていきます。調理台の端に引っ掛けて使うようになっています。
ちょっとしたものは、正面にかかっている黄色いまな板で、私たちにも見慣れた包丁やぺティナイフを使って、トントン刻むこともあります。

これは田舎のお屋敷の台所。
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下に座って調理するのは、よくある光景です。あぐらをかいて座り、包丁の台座を足で押さえています。
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インド南部、タミルナードゥ州の海沿いの町では、魚市場の出口に、魚をさばいてくれるお姉さんたちがいました。50ルピーほど払うと、買ってきた魚のヒレなどを取り、ぶつ切りにしてくれます。立てた刃に魚を当てて、鱗まで取る、華麗な手さばき(魚さばき?)を撮影してきましたのでぜひご覧下さい!

ちなみに魚市場は屋根があるのみで、常温(その頃は気温30℃以上)で魚を並べています。ハエがたかってはいるものの、鮮度はそこそこ良さそうでした。日本のように生で食べるのは難しいでしょうが、殺菌効果の高いターメリックなどのスパイスを加えて炊くので、これでいいのでしょうね。
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こんな贅を尽くした美しい包丁もあります。美食の郷として名高い、タミルナードゥ州のチェッティナードゥという町で見たもの。由緒あるお屋敷で使われていたもので、博物館の展示品です。
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ちなみに、お隣の国スリランカでは…
カレーの具にするバナナの花をトントン刻んで、まな板を片付けたと思ったら…
「あ、トマト切るの忘れたわ」と、刃を上に向けた状態で、包丁をお腹と調理台の間に挟み、トマトを当てて切っていました!!!
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香取薫先生のブログでも、スリランカのこの包丁使いが紹介されていました。先生はインドでも1、2回、同じやり方を見たことがあるとのこと。

イギリス植民地支配によって滅ぼされたスリランカのキャンディ王朝(1469~1815)の食文化を伝える本には、当時の包丁の写真があります(8と9)。
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インドのものとは形が違いますが、刃が上を向いていて、食材を当てて切るようになっています。解説文によると、柄の部分に座って使うらしい。
まな板を使わずに切るところは、インドと似ていますね。
出典: Ananda S. Pilimatalavuva, Recipes from the Cookery Book of the Last Kandyan Dynasty (2011)

追記(2016.7.30): スリランカの台所で包丁を使っている様子を描いた絵を見つけました!
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出典: Sybil Wettasinghe, Child in Me, Tharanjee Prints, 1996, p.12

日本では、いつから今のような包丁を使っているのだろうと調べてみたところ、面白い記事をみつけました。

澁川 祐子「料理人のパフォーマンスで発達した日本の包丁」

記事によれば、包丁の先祖ともいえる「刀子(とうす)」と、「切机」と呼ばれるまな板が、大陸から伝わったのは奈良時代のこと。
日本でもそのころはインドと同じく地べたに座って調理をしていたためか、まな板には脚がついていたそうです。まさに、切るための机だったんですね。

日本では、伝来当初からまな板とセットだった包丁ですが、実は、西洋の包丁は、必ずしもまな板を使うことを前提にしていない、という筆者の分析が興味深い。
箸で食べる文化圏では、つまんでそのまま口に運べるように切り方に気を使うけれども、ナイフとフォークの文化圏では、各人が皿の上で好きなように細かくするので、調理段階で切り方にこだわる必要がなかったのではないかというのです。

そう言われると、手で食べるインドやスリランカでは…、と想像がふくらみます。

ちなみに…
とても面白い記事だったので著者名をよく見たら、なんと!高校の同級生でした(笑)たぶん卒業以来お会いしてないですが、こんなところで活躍の一端にふれ、感激です。

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インドでまな板が使われてこなかった理由のひとつとして、香取先生は、水が必ずしも潤沢とは限らないインドで、まな板を頻繁に洗って清潔に保つのが難しいことも関係あるのでは、と推測しています。

そんな暮らしの背景に思いをめぐらせながら、キッチンスタジオペイズリーの授業では、みんなで床にしゃがんでインドの包丁でキュウリを切ってインド風サラダを作るんですよ!
私も担当しているビギナーズコースで、毎度、かなり盛り上がる、大好きな実習です。

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